上手な退職方法

退職には「会社都合退職」と「自己都合退職」の2種類があります。それぞれ失業給付金(失業保険)の支給開始日や給付日数に違いがあったり、受け取れる手当が違うことを知っていましたか?

また、2つの違いを知らなければ、退職願や退職届を出す際に思わぬトラブルに発展することもあり得ます。

退職で損をしないよう、会社都合退職と自己都合退職の違いを正しく理解し、次の生活に備えましょう!

会社都合退職、自己都合退職はどう違うの?

退職にはさまざまな理由が伴いますが、退職原因の所在によって、「会社都合退職」と「自己都合退職」の2つに大別されます。

会社都合退職

会社側が経営不振やリストラ、倒産などを理由に一方的に労働契約を解除し、労働者に退職を余儀なくさせること。労働者が早期退職制度に応募して退職した場合も、会社都合退職となります。

自己都合退職

労働者側が転職や結婚、妊娠、出産、引っ越し、家庭の都合などを理由に、自分の意思や都合で退職を申し出ることです。

同じ退職でも、会社都合と自己都合では失業保険の取り扱いが変わります。転職の際に採用担当者の心証が変わる可能性もあります。また、「本当は会社都合退職なのに、知らない間に自己都合退職扱いになって不利益を被った」といったトラブルがないように、会社都合退職と自己都合退職のメリット・デメリットや条件などを正しく理解しておきましょう。

会社都合退職のメリット・デメリット

会社都合退職のメリット

失業手当を早く、長くもらえる

会社都合退職のメリットとして、自己都合退職に比べて「失業給付金(失業手当)の支給が優遇されること」が挙げられます。

なかでも大きいのは、失業給付金を早く受け取れること。
自己都合退職の場合、ハローワークに離職票を提出後、待機期間7日+3カ月を経るまで失業給付金を受け取ることができません。
一方、会社都合退職の場合には、待機期間7日間+約1カ月後に第1回目の支給を受け取ることができます。

給付日数が長いことも、会社都合退職のメリットです。
雇用保険の被保険者期間や年齢によって異なりますが、自己都合退職の給付日数90~150日に比べて、会社都合退職の給付日数は90~330日と長く設定されています。

会社から「解雇予告手当」を受け取れる

加えて、会社都合退職では、「解雇予告手当」を受け取れる場合もあります。

自己都合退職の場合、退職まで働いた分の賃金や退職金以外が支払われることはありません。しかし、会社都合の解雇の場合には、会社側は労働者に対して離職日の30日以上前に解雇を予告する義務があり、その予告がなかった場合、従業員は会社から30日分以上の平均賃金を解雇予告手当として受け取ることができます。
例えば、何の予告もなく即日の解雇を通告された際には、給与30日分以上が支給され、10日後の解雇を予告された際には、10日分を差し引いた給与20日分以上が支給されます。

会社都合退職のデメリット

一方、会社都合退職のデメリットといえば、転職活動において不利になりかねないことです。

履歴書に「会社都合による退職」と記載があれば、採用担当者や面接官はその理由を面接時に確認しようとします。会社の倒産や経営不振を理由とした「整理解雇」のケースなど、個人ではどうにもならない理由は問題になりません。

ただし、会社へ不利益をもたらし解雇されてしまう「懲戒解雇」や、個人の業績不振や実力不足、就労態度の問題、人間関係上のトラブルなどに寄る「普通解雇」「退職勧奨」であれば、選考で不利になる可能性があります。そのため、自己都合退職と比べて、より慎重に書類・面接対策を練っておく必要があります。

なかには「失業給付手当をすぐにもらいたい」という目的だけで、会社側にさまざまな理由をつけて会社都合退職にしようとする人もいますが、転職活動への影響を考えると賢明ではありません。一度でも会社都合退職をすると、「会社都合退職」の文字はいつまでも経歴上につきまとってしまうことを肝に銘じておきましょう。

会社都合に該当する正当な退職理由

一般的な会社都合の退職理由は、次のとおりです。

(1)会社の倒産(破産、民事再生、会社更生、手形取引の停止等)
(2)事業所単位で1カ月に30人以上の離職予定、もしくは会社の3分の1を超える人の離職
(3)事業所の廃止
(4)解雇(違反・違法行為などを起こした際の懲戒解雇は自己都合退職扱い)
(5)会社側から直接もしくは間接的に退職の勧奨を受けた場合(退職勧奨)

ただし、「経営が危うくなってきた」「倒産の危険性がある」と自分で判断して退職を申し出ることは、自己都合退職扱いとなりますので、その点は注意必要です。
また、(5)の退職勧奨を受けた場合も、勧奨を承諾し、自分から退職を切り出した際には自己都合退職もしくは合意解約となり、会社都合退職にはならないので注意が必要です。

自己都合で退職しても、会社都合にできるケースも

上記(1)~(5)に加え、以下のような「会社都合に値する正当な理由があった」ことが認められれば、やむなく自己都合として退職した後でも、ハローワークが会社都合と認めるケースがあります。ただし、その際には内容に応じて労働契約書や就業規則、給与明細書、タイムカードなどの証拠提出が求められます。

会社都合退職にできる可能性があるケース

  • 事業所の移転により、通勤が困難になった(自宅-会社の通勤時間が往復4時間以上)
  • 給与・待遇、労働時間、業務内容などの労働条件が契約内容と異なる
  • 給与支払いの遅延・滞納・未払い
  • 給与の減額(従来の給与額の85%未満に減額された場合)
  • 毎月の残業時間が45時間以上に達し、その状態が3カ月以上続いた
  • 仕事内容の変更(技術職で入社したにもかかわらず販売職への異動を命じられたなど)
  • 更新前提だった雇用契約が更新されない
  • セクハラ、パワハラ、いじめ、嫌がらせの被害を受けた
  • 会社都合で休職命令を受け、休職が3カ月以上続いた
  • 会社が法令違反を犯した

直近の残業時間の計算やパワハラ、モラハラの可能性があればこっそり録音するのも手です。

パワハラ、モラハラの記事は



で紹介してます。
いずれかに当てはまり、会社都合退職に変えたい場合、ハローワークで相談してみましょう。

会社都合退職なのに退職願や退職届の提出を求められたら

会社都合退職の場合、退職願や退職届を出す必要はありません。
しかし、会社側にとっては、会社都合の退職者が出ると助成金の支給停止やブランド力の低下といったデメリットが生じてしまいます。そのため、会社都合の場合でも、悪質な企業は労働者に退職願や退職届の提出を求め、自己都合退職扱いにしてしまうこともあります。
そうしたトラブルを回避し、不当な自己都合退職扱いにされることを避けるためにも、退職願や退職届を求められても安易に承諾せず、断ることが賢明です。

ただ、会社都合のなかでも退職勧奨の際には、良識のある会社でも手続き上の理由で退職届の提出を必要とするケースがあります。
そうした場合にも、念には念を入れ、会社都合退職の通知書を求めるか、その旨を一筆書いてもらうか、あるいは会社側に会社都合退職であると確認した音声を記録しておき、会社都合退職であることの証拠を揃えておきましょう。

そのうえで、退職願や退職届を書く際には、自己都合退職のように「一身上の都合により」と書くのではなく、「貴社、退職勧奨に伴い」といった会社都合であることが分かる文面にすることが、後々のトラブル回避につながります。

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